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渡るそよ風の、寂しく吹き通る野に一輪

淋しげな様子はなく立つ花の、空の色を写して揺れる花びら


仰向いて、降り落ちた空の破片のように

底のない蒼さが光を集める小さな花の

微風にまぎれる香りの甘さに

手折るため伸ばした指のためらう先

見つめているだけでは足りず

いずれ枯れるとわかっていても

懐ろに抱きしめずにはいられず

土に張ったか細い根を引きちぎる愚かな己れの手指


空から分かたれたその青さ

呼吸を忘れて見入り、吸い込まれて、飲み込まれる

果てのない青の深さへ溺れてゆく

溺れ果てて、青に染まる

ちぎれた根に絡みつかれ

いずれそこへ張る根へ吸い上げられる己れの命は

青く照り映える花びらの縁ににじむ淡い蒼


青へ、ただ青へ

何もかもを染め上げて、ただ青へ

見上げればそこにある空の色を写して

花びらの儚さとは裏腹のその根の猛々しさ

野の風に吹き揺れて一輪きり

道連れののないその青さで世界を染めて

呼吸すら忘れて眺め続ける後には、唇すら青く染まる

青い唇を噛む、花びらを食む

そして血も青く染まる

染まり果てて、花に還る


青へ、ただ青へ

ただ、その青へ、青へ

投稿者 43ntw2 | 返信 (0) | トラックバック (0)

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