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書く道具

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 やる気が失せると、道具探しを始める癖がある。

 昔なら、紙やペンにやたらとこだわってみたりしたのだろう。実際に、書き心地が好みのペンを探して、週末にはよくあちこちの店を歩き回ったものだ。

 今ではそれが、エディタ探しに変わり、初めてPCを手に入れた時から数えて、今使っているエディタは一体幾つ目になるだろう。

 初めて自分のPCを買った時に、最初にしたことはフォントとワードプロッセッサーのインストールだった。それがなければ、PCでは文章を打てないものと信じ込んでいたからだ。

 ろくに下調べもせず、店で眺めてその場で買うと決めたワープロソフトが、後でそれほど悪くはないものだったと知ったのは、インターネットが普及して以降のことだが、今もまだ本棚にはそのソフトが箱ごときちんと残っている。今の私のPCのOSはXPだが、もしかすると今もインストールできるのではないかと、少しだけ考えて実行したいと言う気持ちを時々抑えられなくなる。


 その頃はまだ、自分の書いた文章を印刷して本の形にすると言うのが自分の中では当たり前だったから、一応の体裁を整えられる機能がなければならず、そのせいでそれなりのワープロソフトが欲しいと言うのが理由だったが、その後、紙媒体で文章を外へ向けて発表すると言う手段が主流ではなくなり(少なくとも私の周辺では)、その間に生活の変化のせいで私はすっかり書くと言うことから遠ざかってしまった。

 わざわざ買ったPCは単なる時間つぶしのゲーム機と化し、しかしその間にあれこれ好き勝手にいじくることは覚え、そうして初めて、ノートパッドやワードパッドと言う、打った文章の体裁を整えることを問わなければ、文章を打ってため込んでおくことだけには十分な代物と出会うことになる。


 再び文章を書き始めた時、使うことにしたのはワードパッドだった。

 ネット上に自分の文章を放置する間に、同じように文章を書く人たちと知り合い、一体どんなものを使って書いているのかと、そんな話題になる。あれこれ上がる名前を片っ端から調べて自分で試してみた。そうやって模索するのも、楽しみにひとつになった。

 書き出しだけ数行書いて保存したきりになっているそんな断片が山ほどたまり、増えれば増えるほど埋もれて忘れてしまうことも少なくない。だから、できれば書きかけのものが埋もれてしまわないような、そんなエディタがないかと探してみた。

 そして、保存し忘れてうっかり消えてしまうと言うこともしばしば起こったから、勝手に保存してくれる機能のあるエディタと言うものがあると言うことも探す間に知った。

 それから、これはブラウザですでに経験ずみだったが、タブと言うものが非常に便利だと知っていたので、できれば複数文書を同時にタブで表示してくれるものと、そんな風に、私のエディタに対する期待や要望はどんどん膨れ上がって行った。


 エディタで探すと、出て来るのはプログラム用のものが多く、単純に日本語をただ打って表示して保存してくれるのに使い勝手の良いもの、と言うのが意外と少ない。

 縦書きにしてくれるとか、文章の体裁を整えてくれるとか、検索置き換えが便利だとか、面白そうな機能はたくさんあるが、私のしたいことは、結局はただざかざか何も考えず文章を打って失敗なくきちんと(ファイルサイズの限度などなく)保存してくれることであるので、余計だと思える機能には知らん振りをすることに決めた。

 そうして行き着いたのが、テキストエディタではなくてメモソフトだった。

 もちろんこのメモソフトも良し悪しがあって、大抵のものは行間や字の大きさを変えることができず、長文にはまったく不向きなものもある。が、中には見た目を変えることもできるものもあるし、何しろ大抵の場合は自動保存機能が普通についている。そして起動が早い。

 ワードパッドすらもう起動の間に焦れていた私にとって、アイコンをクリックした瞬間にはもう打つ準備のできているソフトの、どれだけありがたかったことか。


 メモソフトにすっかり慣れた頃、ちょっと気まぐれで、エディタ部分が全面表示になり、静かに音楽を流してくれると言うエディタを使ったことがあった。

 見た目もきれいで、確かに視界の中に邪魔が入らないと言うのはいい環境だったが、残念ながら打つスピードと字の表示されるスピードに隔たりがあり、私の好みではなかった。打ったつもりの字が、1、2秒(以上)遅れて画面に現れると言うのは、思った以上に苛立つものだ。

 バージョンアップでこの辺りは改善されているのかもしれないが、何しろ意外に重いソフトで起動にもそれなりの時間が掛かる(とは言っても十数秒の話だが)だったから、これから先再び使ってみることはないだろう。


 今現在私が文章打ちに使っているのはロシア産のテキストエディタだ。日本語表示にして、自動保存や字数カウントやその他欲しい機能を適当に追加して使っている。

 長文を読むのには少々難のあるフォントと行間だが、それはブログかどこか、体裁の整う環境へ文章を流し込んでしまえば問題はない。

 メモソフトの方は文字通りメモ書きや、ちょっと思いついたことを書きとめておくのに使っている。そして、特に保存する必要はないが、少々長めに打つ予定の文章などを打ったりもしている。

 何を使うにせよ、複数の文書が同時に表示できることと、保存の動作が必要ないことは、私にとっては素晴らしいことだ。


 さてもうひとつ、PCを使う時に重要なのがキーボードだ。こちらはちょっと調べると、マニアかフェチの域であれこれ語る人たちの話題が山ほど出て来る。

 私の方はこの辺りのこだわりはごくごく浅く、引っ掛かりのない、音のうるさくないキーボードが好きだ、と言う程度の話だ。ノートPCのキーボードが好きなのだが、どのノートPCでも同じと言うわけでもない。どれだけ本体を気に入っても、キーボードが気に入らなければ使う気にならない。

 デスクトップなら自分の好きにキーボードを選べると思ったのだが、これがまた甘い話と悟ったのは、店に行って話をしても、キーボードの打鍵感についてなど誰もこだわってはいないと思い知った時だった。

 箱から出して触らせてもらえないかと頼んだ時の、あの一瞬の間。こちらを眺める目の、はあ?と言う表情。

 あの視線に耐え切れない私は、恐らくキーボードの打鍵感など語る資格はないのだろう。


 キーボードの打ち心地と言うのは意外と重要で、夏など汗をかいて指先にひっつくのは困るし、こちらが打つのに一瞬遅れて反応を返して来るのも困る。押した感覚が深く、音がうるさいもの個人的に好みでない。

 結局、キーボードが気に入らないと言う理由で打つ気が失せたと、サイトを放置する体のいい言い訳にしたりもするのだ。

 きちんとキーボードを展示している店を探して出掛け、あれこれ触って悩んでひとつ選んで、使ううちに気に入らなくなってまた次、と言うようなことを繰り返して、今はワイヤレスのキーボードを使っている。

 今使っているのは、ぬるぬるとしか表現しようのない打鍵感だがそれなりに気に入っている。表面の字の刻印が意外と長持ちしないらしいのが懸念だが、どの程度の付き合いになるか、じっくり見て行こうと思う。


 思いつくと、何か新しいエディタはないかとネットをさまよう。実際にダウンロードしてインストールして、最初に数行打つことにさえ至らないソフトもあるが、探すという行為が私には充分な娯楽のようだ。

 いつか大枚はたいて、最高にお気に入りのキーボードを手にするのが私の夢だ。

投稿者 43ntw2 | 返信 (0) | トラックバック (0)

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