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 買い物へゆく。紅茶へ入れるための牛乳を買いに。

 毎日必ず飲む紅茶に、牛乳が欠かせず、空のカバンに財布と鍵と文庫本を入れて、私は牛乳を買いに行く。

 今時は店で買い物袋をもらえることは滅多となく、必ずそれ用のカバンなり袋なりを持ってゆく。今日のカバンは牛乳用の、しっかりした帆布のトートだ。別にこれ用と言って手に入れたわけではないが、重い牛乳を抱えて歩くのに大きさも頑丈さもちょうどよくて、いくつかあるポケットのそれぞれへ、財布を入れたり鍵を入れたり予備の手提げを入れたりして、私はほとんど空のそれを手に、バスに乗って牛乳を買いに行く。

 牛乳を買うのが目的なのに、カバンに財布を詰めながら、まるでこれを持って外へ出るのが目的のように、私はちょっとうきうきとそれを手に、夕暮れの色のかすかに見えるバス停までの道を、通り過ぎる猫に手を振りながら歩く。

 牛乳がなければ紅茶が淹れられない。それはほんとうだ。だがほんとうのところ、私はただこのカバンを手に、外へ出掛けたいだけなのかもしれない。

 ほとんど空のまま、まだ軽いトートが、帰りには牛乳でずっしりと重くなる。家へ帰り着くまでに何度か右と左で持ち替えなければならないほど、帰り道には重くなる。

 適当に作った夕食の後、ひとり分の紅茶を淹れて、たっぷりと、買って来たばかりの牛乳を注ぐ。これで私の1日は終わりだ。後は紅茶をゆっくりと飲み干して、読みかけの本を片手にベッドへ行くだけだ。

 牛乳を運んだ後で空になったカバンは、たたんでクローゼットにしまって、私もベッドへ入って、眠る。

 起きたらまた紅茶を淹れよう。牛乳はまだたっぷりとある。

 掌と指に食い込んだ重さの分、冷蔵庫は牛乳で満たされている。それに安堵して、私は眠る。

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